矩継琴葉商品開発考察報告書完結編
(「極上生徒会」の「矩継琴葉」の二次創作小説)



グッズなどでコンビを組める人材を探し、歩にたどり着いた琴葉だったが。
「ごめんなさい無理です」
「な、何故・・・?」
「ほら、私ってりのと友達ですよね?だから」
「しかし、蘭堂りのには会長が・・・」
歩はチッチッチと指を振った。
「甘いですよー、りのは主人公なんだからこれくらいの待遇は普通です。」
「そういうものなのか・・・」
「ちょっと情報不足でしたね。」
いたずらっぽい笑みで言われ、隠密としての自尊心が痛む。
「くっ・・・、今に見ていろ!」
そういい捨てると、琴葉はどこかへ消えた。
琴葉の行方を楽勝で眺める歩は、
「見ていろって、隠密のセリフじゃないと思うなあ。」
のんびりとそうつぶやくと、自然に生徒の中に溶け込んでいった。


木々を縫って駆けつつ、琴葉は考えを決めていた。
(やはり私がコンビを組んでグッズ販売に乗り出すには、あの人しか・・・!)


「久遠、木陰で読書とは風雅だな。」
「奈々穂さん。」
昼休み。
久遠は木陰から立ち上がると、本の表紙を見せた。
「何を読んでいるかまで、よく分かりましたわね。」
「え?」
訝しげに表紙を覗き込むと、『毒書〜これであなたも毒マスター〜』とあった。
「・・・なんなんだ、この本は。」
「致死的な猛毒の扱いから、ちょっとした言葉の毒まで豊富に扱う名著ですわ。」
「名著なのか。」
「ええ。・・・ところで奈々穂さん、何か用かしら。」
「いや、ただ通りかかっただけだ。特に用はない。」
「あら、暇人でしたのね。」
「・・・遊撃の見回りの一環だ。そういう久遠こそ、暇そうだな。」
「忙しいですわよ。これも隠密の勉強ですから。」
「い、一体隠密はどんな・・・いや、いい。いい。言うな。頼むから言うな。」
「あら、残念ですわ。」
「そこまでだ!」
「!」「!」
二人が声に振り向くと、誰もいなかった。
「琴葉ですの!?」
姿が見えない=琴葉。間違いない。
「!」
一瞬感じた殺気に飛びのくと、
今までいた所に小さな手裏剣がびっしりカカカカカカッと刺さった。
「一体どういうつもりだ琴葉!?」
「今のはほんの挨拶代わりです。では。」
耳元で声がしたと思うと、声と共に琴葉も消えていた。
「・・・琴葉?」
「!奈々穂さん!これを。」
「何だ!?」
久遠が指す先・・・さっきの手裏剣がびっしり刺さっているところをよく見ると
「こ、これは・・・」
「さすが琴葉ですわ。」
真上から見ると丁寧な挑戦状の長文をかたどっていた。
―拝啓 暑い日が続きますが如何お過ごしで云々。
「長い!」
「でもこれだけの文章を・・・。すごい技術ですわ。」
長文の大意を述べれば、久遠をかけて今日の17時に勝負を申し込む、ということだった。
「・・・久遠をかけて?」
「あら、奈々穂さんたち私の為に争っていただけるのかしら?」
「なんでそんなことをしなければならないんだ。」
「琴葉が勝負を申し込んだからですわ。」
「くだらん。無意味な争いをする気はない。」
「まあ、奈々穂さんが勝負から逃げるなんて。」
「逃げるだと!?」
「ええ、そうですわ。勝負に背を向けるなんて、男らしくありませんわね。」
「男ではない。」
「そうでしたっけ、金城モー助さん?」
「その話を蒸し返すな!」
「・・・それで、どうします?琴葉のこと。」
奈々穂は少し考え、言った。
「・・・仕方ない。とりあえず17時に指定の場所へ行って説得を試みる。」


17時。宮神学園裏門前。
「正門じゃない所はいかにも隠密らしいな。」
「正門では必要以上に目立ちますから。」
なんとなく風が吹いてる気分になりつつ、対峙する二人。
「勝負の前に聞きたい。なぜ久遠をかけてなどと?」
「・・・販促です。」
「反則?」
「私自身の販売促進活動です。隠密として全く商品が出ないならまだしも、
適当なポジションに、決まったコンビがあるわけでもなく適当に立たされるのは嫌ですから!」
「な・・・!」
言われて初めて気付く。
(確かに微妙なポジションだ・・・!)
「だから!あなたを倒して、久遠さんとのコンビポジションは私が貰い受けます。」
説得して戦闘を回避しようと考えていたが、これは、無理だ。
奈々穂は琴葉をまっすぐに見つめ返した。
「わかった。この勝負、受けて立つ。」
「待って!奈々穂!琴葉さん!」
「「会長!?」」
臨戦態勢に入った途端の乱入に、戦闘は中止を余儀なくされた。
「会長、ここは危険ですから離れてください。」
会長は走ってきたらしく、肩で息をしていた。
「いいえ、離れないわ。だって、二人が、戦う必要は、ないのよ!」
「・・・どういう、ことですか?」
会長は数回深呼吸をすると、また話し始めた。
「事情は久遠さんから聞いたわ。琴葉さんの最適な商品開発プロジェクトはもうできているの!」
「そ、そうなんですか?」
素直に驚く琴葉。
「ええ。ある意味、他の誰より出番は多く、他の誰より隠密らしい・・・。
そんなポジションを、もう用意してあるのよ。」
「そ、そんな・・・」
戦意を喪失し、全身の力を抜く琴葉。
それを見て、奈々穂もヨーヨーを外す。
「あなたのポジション、なかなか決まらなくてごめんなさいね。
でももう大丈夫。あれなら、きっと琴葉さんも気に入ってくれるわ。」


数ヶ月がたち、極上生徒会グッズが大量に発売されたが、琴葉のものは一切なかった。
だが、琴葉は十分に満足していた。
そんなある日、琴葉と廊下ですれ違った奈々穂は気まずげに声をかけた。
「琴葉。本当にあれでいいのか?」
嫌なら嫌と言っていいんだ的口調に、琴葉は首を横に振った。
「私は本当に満足です。まさに隠密の居場所です。」
琴葉はめったに見せないかすかな笑顔を見せ、通り過ぎていった。
「・・・隠密、か。よく分からないな。」


―極上生徒会隠密・矩継琴葉商品開発考察報告書―
議論の結果、彼女は全ての商品に出演してもらうことになった。
ドラマCDでは一言も発さずにアフレコ現場に佇み、
写真撮影ではギリギリフレームの外に佇み、
イベント各種ではギリギリ舞台袖や他の人物・大道具の背後に佇む。
これは確定事項である。


END.


※勿論全部フィクションです。


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あとがき。

前に書いたのがさすがに微妙なので(いや個人的には微妙なものとか好きなんですが)、
ちゃんとした形?に完結編を書きました。
いやーなんかテスト前ってSS書きやすいですね(勉強やばいぞ)。
あゆちゃんがなんか強いのは、書いてたらそうなりました。
でもなんか、実は琴葉より上みたいな印象が。
この印象も、あゆちゃんメインの回とか見たら変わるかもしれませんが。
あー設定の出尽くしてないもののSSって怖い。
全部想像です!公式設定本気で無関係になっちゃってますよこれ。
あ。
ちなみに会長来た時久遠いませんでしたが、
ちゃんとどこかから覗いてましたよ。当然。
思ったより会長が着くのが早くて残念がったことでしょう。
(05.7.30.)

追記。
TV放送で歩と琴葉の会話が出て、そっちは歩敬語だったのでSSも歩敬語にしました。
(05.8.25.)
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