全てはピロットの為に。
(「極上生徒会」の「金城奈々穂」の二次創作小説)



「ば、馬鹿な・・・。」
極上生徒会・鬼の副会長奈々穂はPC画面前で愕然とした。
―ピロットちゃん人形限定発売(宮神支店)―
何度読んでもそう書いてある。
ピロットちゃん関連商品は広く出回っているが、
たまに一部地域で限定発売という品もある。
「・・・だが、なぜ宮神支店で?」
外国で、とか首都圏で、とか第一号店で、とかなら分かる。
だが、なぜわざわざここの商店街なのだろうか。
奈々穂は5分ほど画面前で考え込んだが、もっと重要なことに気がついた。
―なお、通信販売は勿論、予約もご遠慮させていただいております。
恐れ入りますが、発売当日に直接ご来店下さい。
(数量限定の為、売切の場合もご了承下さい)―
「・・・新作ゲーム発売日のように並べというのか?」
しかも、極上生徒会・鬼の副会長に。
「・・・!そうか、久遠だ。久遠がいるじゃないか。」
奈々穂のファンシーグッズ集め趣味を知っているのは、
今のところ会長と久遠、・・・とりのと人形(プッチャン)とみなもだけ・・・のはずである。
まさか会長に頼むわけにはいかないし、りのやみなもに頼むのも心配である。
ここはなんとか、久遠に頼むしかない。


コンコン
ノックに返事はない。
「・・・久遠、いないのか。」
今は放課後である。ひょっとしたらまだ学校で、隠密の仕事をしているのかもしれない。
もう2,3度ノックし、少し待つが、やはり久遠はいないようだ。
奈々穂は仕方なくドアに背を向けた。
「こんにちは、奈々穂さん。」
「うわ!?な、なんだ久遠、今帰ったのか?」
背を向けたとたん、久遠が目の前に立っていた。
「今・・・というか、さっきですわ。」
「さっき?」
「そうですわね、奈々穂さんが、
・・・久遠、いないのか。と、言っていた辺りからいましたわ。」
「なら、なぜ声をかけない。」
「いえ、遊撃のリーダーなら背後に人がいることくらい、
言われるまでもなく察するかと思ったものですから。」
挑発的に微笑む久遠に、つい対抗する。
「せっかく隠密の副会長が気配を消しているんだ。
私が気づいてしまったら、久遠の立場がないだろう。」
「つまり、気づかないふりをしていた、と」
「ああ、演技だ。」
「まあ、そうでしたか。驚きの表現にとてもリアリティがありましわ。
さすが奈々穂さんですわね。尊敬しますわ。」
「う・・・」
本当に尊敬したかのような久遠の口調に、罪悪感を植えつけられる。
「それはともかく、奈々穂さん。私に何か用ですか?」
「・・・用?そ、そうだった。久遠、頼みがあるんだが・・・」


「嫌ですわ。」
即答だった。
「頼む、久遠。もうお前しか頼れないんだ。」
「あら、どうしてですか?きっと、奈々穂さんの趣味はもう皆に」
「ばれてなどいるはずがない!」
「でもプッチャンさんやみなもさんなら、きっと」
「断じてありえん!ああ、あってなるものか!」
久遠は軽くため息をつき、
「仕方がありませんわね。考えがありますから、とりあえず部屋に入っていただけます?」


相変わらず、整理整頓の行き届いた部屋である。
久遠は部屋に入ると、クローゼットに向かった。
少しの時間物色し、数枚の服とかつらを持ってきた。
「つまり、奈々穂さんは自分が限定ピロットちゃん人形を
買うために並んでいるところを他の人に見られたくないんですわよね?」
「・・・まあ、そんな所だが。それで、考えというのは?」
「変装ですわ。」
「変装?」
「ええ。要は奈々穂さんだと気付かれなければいい、ということですから。」
「変装か・・・。まるで隠密だな。」
「ええ。琴葉が得意でしてよ。
でも奈々穂さんにそこまでの変装技術は期待しませんから、安心してください。」
「・・・そうか」


数十分後。
奈々穂は、様々な服装を経た挙句、
金髪長髪のかつらをつけ、みなもっぽい服装にされていた。
「・・・久遠、これは私だと感づかれないかもしれないが、目立たないか?」
「でもファンシーグッズを買いに行くのでしたら、それくらいの方が。」
笑いを堪えているかのような様子で顔を背けつつ久遠が言った。
「・・・久遠。笑いたくば笑え。」
「ではお言葉に甘えさせていただきますわ。」
「い、いや、やっぱり堪えてくれ。」
「わがままですわね。」
「というか、やはりこれは・・・。他はないのか?」
コンコン
唐突にノック音が響いた。
「久遠さん、奈々穂は来てないかしら。」
会長の声である。
「丁度いいですわ。」
久遠が不敵に笑んだ。
「丁度いい?丁度悪いじゃないか!どうするんだ、こんな格好で。」
「心配いりませんわ。会長に変装が見破られるかどうか、実験しましょう。」
「なっ・・・!お、おい久遠!」
奈々穂の制止も聞かず、久遠はドアに向かい、さっと開けた。
「こんにちは、会長。お待たせしましたわ。」
「久遠さん、こちらこそ急にごめんなさいね。
ちょっと奈々穂に用事があったの。奈々穂は来てない?」
「奈々穂さんは来ていませんが・・・、すみません、実は知り合いが来ています。」
「あら。でも、たしか極上寮に部外者は・・・」
「本当にすみません。挨拶させますわ。・・・花子さん、いらっしゃい。」
ドアの死角に隠れていた奈々穂だったが、仕方なく出て行く。
なるべく会長と目を合わせないようにしつつ、会釈する。
「・・・奈々穂?」
即バレだった。


「まあ、そういうことだったの。」
仕方なく事情を説明すると、ようやく会長は安心したようだった。
「私、てっきり奈々穂に女装趣味があったのかと」
「会長。私は女性ですが。」
「考えてみれば、奈々穂さんの髪を長く見せても会長には無駄でしたわね。
奈々穂さんは宮神学園に来る前、長髪だったのですから。」
優雅に紅茶を飲みながらさらっという久遠に、制服に着替えた奈々穂が視線を向ける。
「なんでも知っているんだな、隠密は。」
「なんでも、とはいきませんわ。」
久遠が微笑を浮かべて会長を見ると、会長は微笑み返した。
「そうね。」
その様子を黙って見守っていた奈々穂だったが、ふと思い出す。
「そういえば、会長。私に用事とは何ですか?」
問われて少々バツの悪い表情をする会長。
「ああ、そのことね。もっと早く奈々穂に教えておけば、こんなことには・・・」
「あの、こんなこととは一体どういう意味でしょうか。」
「あ、違うのよ?あの服装についてとやかくいうつもりはないの。」
「・・・そ、そんなに変でしたか?」
「変だなんて、その・・・」
会長はささやかに視線をそらせた。
「ええ、とても似合っていたわ、奈々穂。」
「・・・・・・」
「それで、結局用事というのは?」
久遠の話題戻しにより、会長が言うには、
今回の宮神支店の限定ピロット発売に、奈々穂は並ぶ必要がないとのことだった。
「実は、もともと奈々穂にプレゼントしようと思って私が・・・」
「つまり、会長が奈々穂さんに、日頃の労をねぎらう為ピロットちゃんを特注したところ、
せっかくだからということで、宮神支店でも同じタイプを限定販売。
そういったところかしら?」
「ええ、概ねその通りだわ。さすが久遠さんね。」
「ただ、全く同じタイプというのも悪いということで、
奈々穂さん用のピロットちゃんのリボンは宮神支店用の青と違えてオレンジ色で、
小さく奈々穂さんの名前もローマ字で刺繍してあるんですわね。」
「まあ、満点だわ。」
「ありがとうございます。」


会長が早速、と奈々穂専用ピロットちゃん人形を部屋に取りに行くと、
しばらく沈黙を守っていた奈々穂がぽつりと、よく通る声でつぶやいた。
「久遠、最初から全て知っていたのか。」
久遠は笑顔で応えると、ヨーヨーが飛んでくる直前に窓から飛び逃げた。


END.


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こんなとこにあとがき。

新作ゲーム発売だの窓から飛び逃げだの、アニメパロディ多いですかね。
でもなんか使いたくなってしまいます。
恐るべし黒田さん脚本影響。
久遠は最初から全て知っていて遊んでました。
なんか、そんなイメージの人です。
あ、そうだ、せっかくだからいつ書いたのかメモしておこう。
うちのサイトは何がいつ置かれたのか書かなさ過ぎる気もする今日この頃ですし。
(05.7.22.)
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