幻の怪物 幻の怪物
(スレイヤーズの二次創作小説)


※これは、すぺしゃるから10年後の話で、主人公はオリジナルです。


吹雪だった。
視界は雪で閉ざされ、今どこにいるのか。目的地にどれだけ近づいたのか。
もしくは、遠ざかったのか。
・・・分からない。
体力も尽きてきた。もう駄目かもしれない。
「どこにいるんだ・・・。」
僕はそれでも、目を開けて辺りを見回し、探した。
「どこにいるんだ、リナ・インバース!」


町外れの酒場。それは父さんの店だ。
町外れだから儲からないのが難点。
母さんも家出たし。
僕は貧乏なんて嫌いだ。
僕は勉強して、偉い役人になるんだ。
「カイル、ちゃんと聞いてんのか!?」
「・・・聞いてる、聞いてる。」
「嘘つけ!?本なんか読みやがって!俺の話をもっと尊べ!」
「よっぱらいの戯言なんて、聞いても仕方ないよ。」
僕は「法律大全」と表紙に書かれた本を閉じた。
「父さん、この人どうにかしてよ。
さっきからうるさいんだ。なにが伝説の化け物だよ、くだらない。」
「本当の話なんだよ、カイル。
俺は吟遊詩人ってな商売しててよ、各地を転々としてんだ。
で、ある町の酒場で聞いたんだよ。
角が三本もあって、手も六本!
つり目で、あらゆる呪文を使いこなし、
ブラス・デーモン、シーサーペントとのキメラだって話さ。
しかもべらぼうに頭もいいって話だぜ。
名は、リナ・インバース。
どうだ、怖いだろ。」
「そんなのいるわけないだろ。
そんなの作ってなんになるんだよ?無駄無駄。誰も作んないよ。」
吟遊詩人は急に僕を引きよせ、低く小さい声で、僕だけに聞こえるように言った。
「・・・サイラーグを滅亡に追いやったのも、そいつって話だぜ。
それに、セイルーンで大規模な破壊があったろ、昔。あれも、・・・そいつだ。」
「・・・嘘だろ」
だとしたら、まさか・・・
吟遊詩人は僕の考えを察したのか、深く頷いた。
「そうだ。そいつは、世界征服の為に悪の組織が作り出した怪物。・・・もしくは、悪魔だ。」
そんな怪物が今も、どこかに・・・?
僕は怖くなってきた。
「父さん、どうにかしてってば!」
父さんはようやく掃除の手を止め、こっちを見た。
「吟遊詩人さん、そこら辺でやめときましょうや。
その話は、よくない。
関わったものが全員不幸になるって話だから。」
「・・・え?」
「ほう、やっぱ知ってるか。さすが酒場の主人だ。」
父さんが知ってるとなると、俄然真実味を帯びてくる。
嘘だけは言わない人だから。
「けど、この話にはいいところもあるんだぜ。
リナ・インバースを捕まえ、その角を煎じると、万病に効く薬ができるって話しだからな。」
「・・・やめましょう。こんな話は。」
父さんの真剣な様子に気おされ、吟遊詩人は黙ってしまった。
「・・・ちっ。10年もまえからある噂だぜ?
いまさらどうこうってことはねえよ、ただの御伽噺さ。」
「あ!?やっぱり嘘だったんじゃないか!」
吟遊詩人はしまった、という顔をした。
「カイル、お前はもう寝る時間だぞ。」
僕は興ざめして店を出て、近くの家に向かった。
「あれ、じゃあ、父さんも嘘をついたってことになるぞ?
まあ、いいや。どうせ御伽噺だし。」
僕は雪でも降りそうな寒さに顔をしかめつつ、家に入った。



吹雪は収まるどころか激しさを増している。
ふと見ると、間近に地面があった。
―気絶したのか。
僕は立とうとしたが、立てなかった。
それどころか指一本動かない。
―どうしよう。
僕は焦った。
そのとき、とても奇妙な声が吹雪の音にも負けず、響いた。
「ほーっほっほっほ!
誰だか知らないけど、こんなところで寝ていると風邪をひくわよ!?ほーっほっほっほ!」
僕の意識は、奇妙な声の主を見る前に、闇に落ちた。


「カイル!すぐに来い!!」
「・・・う?」
目を開けると、朝だった。
「カイル!!」
見ると、お隣さんだ。
「あ・・・おはようございます。」
「いいから速く来い!」
お隣さんは僕の腕を強引に引っ張って行った。
「ど、どうしたっていうんですか!?」
お隣さんは答えず、僕を酒場に連れて行った。
「・・・!父さん!!!」
そこには何人かの村人がいた。
けど、僕の目に入ったのは、二人の人間だけだった。
父さんと、吟遊詩人。
二人とも、倒れていた。
村人が介抱している。
息はあるようだ。
父さんは固く目を閉じていたが、吟遊詩人は薄く目を開け、僕を見ている。
僕は吟遊詩人のそばに行った。
「・・・何が、あったんですか。」
吟遊詩人はつらそうに、ゆっくりと、昨日とは打って変わった力ない声で言った。
「お、女だ。女が来た。
リナ・インバースの話を・・・していましたね、とか言って、変な宗教の・・・勧誘を・・・した、んだ・・・。断ったら・・・いきなり、怒り出して・・・こっちが、あっけに取られてたら、急に、エルメキア・ランスを・・・ぶちかました・・・んだ。」
「その、女の人って?」
「ぎ・・・銀髪だ。30過ぎくらいの・・・美人だ。」
昨日の記憶がよみがえる。
―関わったものが全員不幸になるって話だから。―
「まさか、あの話は・・・」
本当のこと、なのか?



目を覚ますと、宿屋のベッドで寝ていた。
「・・・ここは」
「ほーっほっほっほ!気がついたようね!」
奇妙な声で一気に意識が覚醒し、正体を探した。
目の前に立っていた。
「うああああああああああああああああああああああああああああ!!!!???!」
な、何者!?いやだって、服?あれ服なの?水着?でも今冬だし!?え?え?
そこには、黒い長髪で、露出度の異様に高い服(?)を来た女性がいた。
「失礼ね!?人を見るなり叫ぶなんて。」
「いや、でもそのこれは人として当然の権利と主張と感想な気もしなくもないかなとか思ってみたりするわけでして!?僕は!」
「・・・ふっ。いつの世も天災は理解されないものね・・・」
「字、間違ってますけど。」
「いちいちうるさいわね!なんで聞いただけで分かるのよ!?」
「いや、これって小説ですから。」
「登場人物がそんなこと言っちゃあいけないって、ママに教えてもらわなかったの!?」
「まあ、それはどうでもいいんですが、その、あなたは何者なんですか?
僕を、助けてくれたようですけど・・・」
謎の女性はふぁさっと髪をかきあげた。
「ふっ!なかなかいい質問ね!
わたしはサーペントのナーガ!通りすがりの心優しい美人よ。」
僕はどう判断していいものか、困った。
・・・結局何者なのか、よく分かんないし。
ナーガさんは、近くのいすに腰掛け、足を組んだ。
「で、なんであんな吹雪の中にいたわけ?」
「・・・探しているんです。」
僕はナーガさんの目をみつめた。
「リナ・インバースって、知りませんか!?」
なぜかナーガさんはむせた。
「リナ!?・・・事情を聞こうじゃない。」
僕は、父さんと吟遊詩人に起こった事件と、リナ・インバースの噂話について、説明した。
ナーガさんは、必死で笑いを堪えているのか、よほど真剣に聞いてくれているのか、判断に困る顔つきで僕の話を聞いていた。
「成る程ね・・・。
 その話は概ね真実よ。わたしは、会ったことがあるのよ、リナに。」
「え!?」
会ったことがあるだって!?
じゃあ、居場所くらい・・・
「でも、今どこにいるのかは、分からないわ。」
「・・・そう、ですか・・・。」
ナーガさんは、真剣と見えなくもない表情で僕に言った。
「わたしは昔、リナにライバル視され、毎日のように戦いを挑まれたことがあるわ。
しかぁし!!」
ナーガさんはいきなり立ち上がり、奇声を発した。
「ほーっほっほっほ!いつもわたしの勝ちだったわ!!」
「す、すごい!ナーガさんって、そんなに強かったんですか!」
「ほーっほっほっほ!ほーっほっほっほ!!」
こう何度も繰り返されると、なかなかに殺人的な笑い方だ。
だんだん頭が痛くなってきた・・・。
「ふっ!ところで少年!!」
「はい!?」
「お父さんが心配で、飛び出してきちゃったのは分かるけど、
もう回復してると思うわよ。」
「・・・え?」
「エルメキア・ランスでしょう?気絶させる程度の威力しかないものよ。」
なんだ、じゃあリナ・インバースの角は、いらないのか・・・
僕は安心して、一気に今までの疲れに襲われ、すぐに意識は沈んだ。


遠くで声がする。
よく聞こえない。
誰だろう、女性みたいだけど・・・。
「ナーガさん、お願いしますよ!」
「そういわれても、頼まれるわけにはいかないわね。」
「そこをなんとか!役人に捕まってからは、すっかり信頼なくしちゃって・・・。
信者さんがまったく来ないんです・・・。
このままでは、新・リナ=インバース神教は廃れてしまいます!
古き良き文化を後世に伝えなくて、どうするんですか!?」
「依頼料なしの仕事なんて、請ける道理がないわね!ほーっほっほ!」
「そうですか、残念です。
リナさんを生け捕りにして、信者さんを増やせば、信者さんから多額の現金が。
それにわたし、オリハルコンの採掘所、知ってるんですよ、実は。
もし請けていただけるなら、ナーガさんも大もうけできたのに・・・」
「ほーっほっほっほ!誰が請けないなんて言ったのかしら!?
その仕事、請けるに決まってるじゃない!ほーっほっほっほ!」
「さすがナーガさん!きっとやってくれると信じてました!」


僕が目を開けると、ナーガさんしかいなかった。
「・・・あれ。誰か来てませんでしたか?」
「ふっ。気のせいよ。」
じゃあ、夢、だったのかな・・・。
「わたしは用ができたから、もう行くわ。ほーっほっほっほ!」
僕は急な別れにあっけにとられ、助けてくれたことの礼をまだ言ってないことに気づいた。
「・・・。じゃあ、ぼくももう、帰ろうかな・・・」
ベットから降りかけたところで、僕の動きは止まった。
「宿代って、誰が払うんだ?」


僕は空になった財布を見つめながら、町を歩いた。
「ナーガさん、払ってくれたっていいじゃないか・・・」
僕はため息をついた。そしてなにげなく食堂を見た。
「!」
ナーガさんだ。
それに・・・あと、もう一人いる。
銀髪の、美人。30過ぎくらい・・・。
「!!」
今日、寝ているときに聞いた会話と、吟遊詩人が言っていた、犯人の特徴。
つながったきがする。
僕は思わず食堂の扉を開け、ナーガさん達のテーブルに向かった。
ナーガさんは僕には気づかず、ひたすら料理を食べていたが、銀髪の女性が僕に気づいた。
「あら、もしかして入信希望者のかたですか?」
―リナ・インバースの話を・・・していましたね、とか言って、変な宗教の・・・勧誘を・・・した、んだ・・・。断ったら・・・いきなり、怒り出して・・・―
―ぎ・・・銀髪だ。30過ぎくらいの・・・美人だ。―
―このままでは、新・リナ=インバース神教は廃れてしまいます!古き良き文化を後世に伝えなくて、どうするんですか!?―
―その仕事、請けるに決まってるじゃない!ほーっほっほっほ!―
「あなた、ですね・・・」
「はい?」
「あなたなんですね!?僕の父にあんなことをしたのは!!」
銀髪の女性は不思議そうに首をかしげた。
「わたしはウィレーネっていいます。・・・人違いじゃないですか?」
「・・・あなたは、おととい、酒場で宗教の勧誘をして、断られた腹いせに呪文を使って攻撃したでしょう!」
「!!!」
ウィレーネは動揺したようだった。
「断られた・・・腹いせに?」
「とぼけたって無駄ですよ!役人に突き出してやる!!」
「違います!腹いせなんかじゃありません!
 あれは洗礼です!新・リナ=インバース神教独特の!
この方法を編み出すのにどれだけ苦労したことか・・・。それなのに、攻撃だなんて・・・。
こうなったらあなたにも聖なる洗礼を!」
呪文を唱え始めたウィレーネ。
「ちょっと、ウィレーネ!役人沙汰は困るわよ!?」
ごすっ。
ばた。
「・・・え?」
ウィレーネは呪文を完成させることなく倒れた。
「・・・危ないところでした。大丈夫でしたか!?」
僕はとりあえずうなずいた。
ウィレーネをそこらの鉢植えでどつき倒し、僕に声をかけたのは、ナーガさんではない。
銀髪で色白の、やや華奢な感じの美人だ。
「貴女は、一体・・・」
「いえ、名乗るほどの者ではありませんわ。・・・あら」
彼女はナーガさんに目を留めた。
「貴女は確か・・・、以前、私の汚名をそそぐのを手伝っていただいた方ですね!
その節はお世話になりました。まさか、こんなところでまた会えるなんて。」
ナーガさんは数秒、彼女を見ていたが、ようやく思い出したようで、言った。
「ああ!あのにせブランド商品みたいな名前の!ほーっほっほっほっ!」
「あの、・・・にせブランド商品って・・・」
「ふっ!気にするほどのことじゃないわ!」
彼女はナーガさんと少し話すと、ウィレーネを連れて、すぐにどこかへ行ってしまった。
ナーガさんの知り合いのようだったけど、一体何者だったんだろう・・・


数日後、僕は村に帰ってきた。
ナーガさんの言うとおり、父さんと吟遊詩人はもう回復していた。
ウィレーネは、謎の女性が役人に連れて行ったし、事件は完全に解決した。
怪物リナ・インバースの噂をすると不幸になるっていうのは、
ウィレーネのせいだったわけだ。
ナーガさんによれば、彼女は以前もリナ=インバース神教を広めようとして暴走し、役人の世話になったことがあるらしい。
謎の女性については、にせブランド商品のような名前の人、としか教えてはくれなかった。
ナーガさんはまた旅に出た。
僕は酒場の窓から空を見て、思った。
ナーガさん、今頃どうしてるんだろう。
あの奇妙な笑い声も、もう聞けないとなると、少し寂しい。
・・・そういえば、リナ=インバースって、実在するのかな。
ナーガさんは知ってたみたいだけど・・・。
僕は頭を振った。
もう、いいじゃないか。
父さんも元気になったんだ。
あえて危険に首を突っ込むことはない。
おそろしい怪物だから、もし会えたとして、無事でいられるだろうか。
僕はさらに空を見続けた。
「どうした、カイル」
窓に父さんが映っていた。
「あのさ、父さん・・・。」
僕は体の向きを変え、父さんと真正面から向き合った。
「僕、冒険者になりたい。」
「・・・何?」
父さんは面食らったようだった。
「危険なのは、分かってる。
でも、僕、リナ・インバースに会ってみたい。」
父さんは黙って僕の目をみた。
ここで目をそらしちゃいけない。僕も父さんの目を見た。
父さんは小さくため息をついた。
「・・・分かった。頑張れよ。」
僕は大きくうなずいた。

僕は部屋に入ると、机の上に投げ出した法律関係の書物を引き出しにしまい、別の引き出しから、昔、旅人が酒場に忘れていってそのままの短剣を取り出した。
「・・・よぉし・・・」
僕はすっかり古ぼけた短剣を、一生懸命研いだ。
時間を忘れてその作業に熱中していたが、ようやく研ぎ終わってみると、夜が明けていた。
「朝日か・・・」
まばゆい光が窓から射していた。
これからだ。
これから、僕の冒険は始まる。

END.


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こんなとこにあとがき。

リナは結局出てきません。
すぺしゃるから10年後のわりに、ナーガが変わってないのはなぜでしょう。
しかも、なんだかナーガらしさが出にくかったです。
難しいですよ、ナーガ。
謎の女性(にせぶらんどみたいな名前)の正体のヒントはすぺしゃる2巻です。

ちなみにこれ、数年前に今は無き某スレイヤーズファンサイトに投稿したものですが、
今はもうないので、自サイトにUPし直してみました。
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